11月3日(金・祝)正午より大阪国際会議場にて『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』が開催された。
今大会の底流に流れる重要な考え方は米国のバイデン大統領が『がん克服からがん撲滅に向けて』いよいよムーンショットプロジェクト加速化させたということだ。
そもそも2018年に成立した超党派による『21世紀治療法』をフル活用して18億ドル(約2700億円)を議会は投資してがん格差に関する研究、創薬推進のための新たな臨床試験ネットワーク、小児がんを研究するための革新的なプロジェクトを発足させている。
この法律によって高等腫瘍学センターの設置を通してFDAにおけるがん関連の意思決定の合理化が図られ、効果的な治療法をより迅速に承認され、患者が規制プロセスに関する情報に直接アクセスできるようになった。
こうした基盤に立ったうえでバイデン大統領はがんの治療法や診断、患者主体の意思決定や新型コロナウイルスによる教訓からがんによる死亡率を今後25年間で少なくとも50%のがんを克服し、がんサバイバーの経験を活かし、その生活を向上させるためにも、『がんを撲滅する!』と宣言したのである。
すなわち、がん予防、検出、治療のスキームを大胆に向上させるために科学技術をフル投入してがんを克服どころか、エンドキャンサー(End Cancer)、つまり撲滅しようというのである。
同様に英国でも2040年までに子宮頸がんを撲滅するという目標が発表された。これは予防によって発症を抑制し、同時に治療によって克服するという考え方である。私が2019年10月にカリフォルニアで行われた『2019 World Alliance Forum in San Francisco』で米国や海外の要人たちの前でがん撲滅を訴えたとき、終了後、熱心に日米がん撲滅宣言のチームの中に英国も入れてほしいと英国政府関係者からのアプローチがあったが、彼らもチームマンカインドによるがん撲滅の重要性に目覚めたのである。これから世界各国に私が提唱しているがん撲滅のムーブメントは広がっていくことだろう。
米国や英国などのこうした動きを見ながら今後、日本政府は大胆な戦略を打ち出せるかどうかが重要になってくる。幸い、わが国では世界がん撲滅サミットが米国よりも先に大胆な戦略を具体的に提示するためのムーブメントやサミットを開催することで先行している。だが、日本政府ががんになるのは仕方ないことだと諦めたかのような「がん克服」という言葉を金科玉条していれば、あっという間に世界のがん医療で周回遅れになっていくだろう。
それが我々の真の狙いなのだと薄笑いを浮かべてもらっても困るが、ここは米国や英国同様、日本政府にもがん撲滅に向けて舵を切っていただきたいところだ。
つまり時代は、今やがん克服からがん撲滅に向けて動き出しているのである。目的はがんを治療によって克服するということだが、目標はあくまでもがん発症ゼロ社会の構築を目指すがん撲滅でなければならない。
日本は周回遅れの道を再びたどるのか、世界のトップリーダーに躍り出るのか、今、重要な岐路に立っているわけだ。我々はどのような同調圧力があっても、そこは譲らない。
がん撲滅に向けて前進あるのみだ。
もちろん今、がんと闘っている人たちが、より希望のある日々を送ることができるようにするためだ。
がん予備軍を発症するのは仕方ないと諦めたかのように手をこまねいたままがん患者にするのではなく、発症抑制治療を重視し、思いもよらずがんを発症してしまった人々が一日も早くサバイバーとして雄々しく生きること。サバイバーとなった方々が再発のリスクにおびえることのない社会の構築を目指すこと。希少がん、小児がん、難治性がん、すべてのがん種でだ!
この3つのサイクルの確立こそが『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』の理念なのである。
中見利男拝