『不易流行と武士道2021~我、一粒の麦たらん!~

 師走の候、皆様におかれましては益々ご健勝のことと存じます。
 さて、12月5日(日)午後1時より開催された『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』は約1,000名の皆様と共に盛況のうちに幕を閉じることができました。
 これも皆様のご支援の賜物と心より御礼申し上げます。

 本日は『我、一粒の麦たらん!』というテーマで皆様にお手紙を差し上げたいと思います。

 一頃、マニュアルやガイドラインという言葉がマーケットで重視されたことがあった。しかし、魂や心を置き去りにしたガイドラインやマニュアルは顧客にとっては不評だった。

 がん医療についても同じことが言える。最近、私の耳に良く届くのは、免疫治療を父親や母親に受けさせたいと願い出た患者のご家族に対して、
「私なら自分の親にそんな治療を受けさせない」というニベもない返事を主治医から聞かされたというものだ。

 特に医療界では中央でも地方でもがんセンターを名乗っているところほど、マニュアルやガイドライン重視の医師が多いと思うのは私だけではあるまい。

 前述のご家族は自分の親に対して、聞いているのであって、主治医と親のことが知りたいのではない。

 確かにガイドラインは従業員や企業、医師、医療機関を守る上でのシートベルトにはなるだろう。

 しかしこうした稚拙なアドバイスはかえって患者や家族からは反発しか生まれない。

 厚生労働省にはガイドラインを患者に一方的に押し付けるのではなく、患者の人生、人生哲学、生き方、家族との関係に十分配慮した診療を行うよう、こうした医師や医療機関には徹底的に指導していただきたいものである。

 医師は神ではない。
 そろそろ、そのことを改めて思い出していただこうではないか。

 また先日のサミットで、原丈人大会長と私は、すでに存在するPMDA関西支所(大阪PMDA)に対する先端医療及び医療機器審査機能の追加による大阪PMDAの機能強化を提案した。

 そのうえで私は公開セカンドオピニオンの冒頭でこう述べた。
「こうした提言や提案に反対する勢力を今から私は抵抗勢力と呼ぶことにしたい。一体どういう人たちが大阪PMDAの機能強化に反対するのか、これから私は逐一皆様にご報告申し上げる。ぜひご覧いただき、この国のがん患者の皆さんに対する抵抗勢力が誰なのか、を知り、目撃してほしい」と。

 号砲は鳴らされた。
 我、一粒の麦たらん。
 麦は生きて大地に落ちたなら、麦のままだが、死ねば実りは広がっていく。

 約2000年以上前に生きた人物の言葉だ。
 その言葉を今、私がもう一度、繰り返そう。
 我、一粒の麦たらん!

 たった20%しか動いていない私の心臓と共に、私はその覚悟を貫いていくだろう。

 抵抗勢力の皆さん。
 麦と私、もし違いが一つあるとすれば、私は自由なる意志で動けるということだ。

 少しずつだが、歩いていく。
 この実りをより多くの人に届けるために。それこそが大阪PMDAの機能強化だ。これによって大阪・関西を先端医療、未来医療の大地にしたい。
 それをやるために私は一粒の麦となるだろう。

 寒い冬が過ぎれば必ず春は来る。
 大地に播かれた一粒の麦もやがて実りを豊かにするだろう。
 皆様、どうぞ益々ご自愛ください。

追伸、がん患者の方々からのご相談があまりにも多いため、ここにアドバイスを記載させていただこう。
 もし免疫療法を受けてみたいと謙虚にあなたが仰っているにもかかわらず、あなたのことを見下したり、ニベもなく「免疫療法は受けても意味がないよ」などの暴言を吐かれたなら、あなたは肚をくくってこう訊いてみることだ。

 「先生、先生は免疫学の論文を何本ぐらい、お書きでしょうか?」
 査読付きの免疫学の論文1つ書き上げていない医師に頭から免疫治療を否定されても患者は追い込まれるだけだろう。
 「それでは免疫治療の医師を紹介しますから聞いてみるといいですよ」と医師も応じてくれたなら、免疫治療が適応する人も適応しない人も納得して、それこそ悪質なクリニックに駆け込むことはないだろう。

 要は患者に寄り添えるかどうかだ。
 たとえ医師にとっては、多くの患者の1人であっても、目の前の命を救うのが医師だ。
 突き放したり、侮辱する資格まで医師は与えられていない。

 そのことを肝に銘じるべきだ。
 それができないというのであれば、簡単だ。
 ベテランの方々の医師免許を5年に1度更新制度にして、患者学をしっかりと学んだうえで、それでも患者に寄り添えない医師を選別すればいいだけのことだ。
 もちろんそのころには医師モニター制度が実現し、モンスター患者からのクレームなら医師を擁護。ドクターハラスメントなら厚労省に報告する制度が生まれていることだろう。我々ではなく誇りある第三者の手で。

中見利男拝

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