『不易流行と武士道2018~がん医療と新しい時代の幕開け~』

 陽春の候、皆さまにおかれましては益々ご活躍のことと存じます。
 山下弘子様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 第4回がん撲滅サミットに向けて準備を重ねております。情報配信につきましては今しばらくお待ちください。
 さて、今、免疫療法について話題が集まっていますが、世界的潮流で見れば、やはり今後は免疫療法と既存または先端医療の組み合わせが主流になっていくものと思われます。

 たとえば、国立がん研究センター東病院は3月2日、ウィルス療法と免疫療法を組み合わせて食道がん等の固形がんに対する医師主導治験の開始を発表。これは風邪の原因となるウィルスの遺伝子を改変して、がん細胞の中だけで増殖するようにした後、免疫薬「ペムプロリズマブ」を投与。これによって免疫細胞の攻撃能力が高まり、より強い治療効果を得ていこうというものです。
 また、すでに皆さんもご存知のように、3月からは同病院で光免疫療法の治験がスタートします。

 しかしながら日本では未だに玉石混淆となった現在の免疫療法のあり方に批判が集中しています。
 たとえば、ある時期から一部の人々が、がん拠点病院で免疫療法をやるのはケシカランと主張したことから、厚労省によってその実態調査が行われた結果、全国に434施設あるがん診療連携拠点病院のうち保険適応外の免疫療法を行なっていたのは84施設。そのうち79施設で標準治療の確立を目的とした治験など、臨床研究の枠組みできちんと行われていたこと。また再生医療法によって届出が必要な14の医療機関はすべて公正な手続きを行なっていたことがわかりました。

 また臨床研究ではないが個別の症例の適応等を考慮して行っているのは5施設あり、1施設は説明文書や同意の取得はしていたものの、院内の倫理審査委員会の審査を行なっていなかったことが判明しました。しかしながら、認定再生医療等委員会での審査は行なっていることがわかったのです。

 どうやら調査前は、まるで重罪を犯しているかのような論調で、がん拠点病院が免疫療法をやるのはケシカランと主張していた人々の指摘や情報の拡散は、やや、やり過ぎの感があったように多くの人々は感じる結果となったようです。ただし、そもそも先の人々の主張は明らかに厚労省の方針とは決定的に異なる点があったのです。

 というのも、国立がん研究センター系の病院が相当な割合で免疫療法にトライしていたうえ、厚労省の皆様方の見解もこういうものだからです。 『がん拠点病院は確かに標準治療を行なう場所ではある。しかし同時に、次の標準治療を生み出す場所でもある』

 実は、この点がナショナルフラッグからきちんと発信されていないことが目下の課題であり、彼らが次の標準治療の創出をどう捉え、どのようなグランドデザインを描いているのかが不透明ゆえに患者の混乱が起きているように考えられます。

 その一方で悪質な免疫クリニックの行政による指導は欠かせません。今後は、クリニックも届け出制にしたり、症例データの提出義務、費用についての詳細と実績の調査や消費者庁とのタッグによって被害者の声が届きやすくするなどの方策が必要です。この点については私も提唱に力を入れて参ります。

 もちろん私自身は標準治療を否定する気はありませんが、では標準治療で100%がんを倒せるのか、というと様々な条件があって現時点で最善であっても永遠に最善とは限りません。だからこそ、免疫療法や先端医療を全否定するのではなく、今後、患者の皆さんにとって救いの一つになるのではないか、という多少なりとも謙虚な姿勢が我々になければならないのではないかと考えます。

 なぜなら、憲法第13条はこう規定しています。
『すべて国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする』

 さらに、WHO(世界保健機関)は1946年にニューヨークで開催された国際保健会議において、「到達可能な最高水準の健康を享受することは人種、宗教、経済的、社会的条件の如何に関わらず、全ての人の基本的権利の一つである」と宣言しております。

 また1966年の国連総会で採択された経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約では健康権はこう定義されています。
「全ての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利」である、と。
これをがん医療に当てはめると、患者にとって必要な治療の開発の継続性と、より個人に見合ったプレシジョンメディシンのように先端治療を受ける権利の保障にもつながるものではないかと思われます。(つまり①健康であるための諸施策(運動、予防ほか)、②時代に沿った身体に負担のない高度な治療の提供。こうしたことが政府や国立系の医療機関に求められているわけです。)
 そうです。我々は達成できる最高水準の身体的、精神的健康を国に求める権利があるのです。
 つまり医療は、これがすべてで、これ以外の治療など開発していく必要はないなどと立ち止まってはならないのです。がんは撲滅などできないと国や医療者、そして国民自身が諦めたり、こうした動きを妨害することなど国際社会では決して許されることではないのです。だからこそ国立がん研究センター東病院のように先端医療を追求し、少しでも患者の手に届けたいという思いで懸命に努力されている人々の存在が重要なのです。

 これだけははっきりと申し上げます。国や医療者は次世代治療への挑戦を止めてはならない! 患者の皆さん。希望を持ってください。そして日本の気鋭の研究者や医師を応援してあげてください。彼らは日々修行者のように苛酷な毎日を過ごしており、頻繁にSNSを配信したり、趣味に没念できておりません。

 もちろん、どんな治療でも最後は自己責任という言葉は一生ついて回ります。だからこそ患者の皆さんも知識を得ることが重要です。
 本物の医療者は誰なのか。果たしてマスコミにもてはやされている医療者だけが本物なのか。中にはフェイクニュースも溢れています。また無名な方にも本物はいます。だからこそ、情報を見極める力や知識が大事なのです。

 そして医療者はもちろん何者も、患者の皆さんからこうした学びの機会を奪うことは厳に慎まなくてはなりません。学問の自由や集会の自由は憲法で保障された権利であることは今さら申し上げるまでもないからです。その上で繰り返しますが、いまだにがんを100%倒せる治療は(現時点において)存在せず、がん種も様々で、そこには希少性、難治がんの存在まで含まれるからです。

 重要なことは、世界の潮流に乗り遅れるのではなく、第4の治療の時代への備えと幕開けの号砲を、この日本から世界に向けて打ち鳴らすべきかと存じます。
 また製薬会社の皆さんも、ぜひ薬を売ることのみを追求するのではなく、がんを治す、撲滅するとの理念を私共と共に追求していただけるようお願いする次第です。
 海外には素晴らしい薬があります。もちろんドラッグラグの解消は重要です。しかし、その一方で日本発の治療を充実させ、日本の研究者や製薬会社を応援し、素晴らしい治療法や薬品を世界の患者さんに届ける体制を作り上げる努力は国民として最も重要な行為ではないでしょうか。
 これまでの抗議や批判ばかりの殺伐としたがん医療から発展的な提案や対話が行われるがん医療の世界に我々自身の手で変革させて参りましょう。

 それによって、がん患者の皆様の治療に対する武器が増え、免疫療法や先端医療の研究者たちも勇気と自信をもって研究と臨床に邁進できるはずです。将来的には、これこそが国益、世界益につながる行動かと存じます。
 ご多忙と存じます。どうぞご自愛ください。

中見利男拝

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