『不易流行と武士道2018~道を拓く!~』

 厳冬の候、皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。
 11月18日に東京ビッグサイトで開催した第4回がん撲滅サミットから早くも1ヶ月近くが経過しようとしています。

 その間、本庶佑先生がノーベル生理学医学賞をスウェーデンで授賞され、華々しいノーベルウィークを楽しまれました。授賞式には紋付き袴の和装で登場されましたが、その古武士を思わせる風貌には長年、道を切り拓いてこられた開拓者としての威厳と誇りがあふれており、世界中の人々が感銘を受けました。

 私もかつて小林裕和師、塩田剛三師、大山倍達師という古武士と呼ばれた武道家とも交流を持たせていただきましたが、その偉人に劣らぬ先生の気迫に胸を打たれました。この度、その本庶先生から先日お送りしたノーベル賞受賞のお祝いのメッセージに対してご丁重な返信をいただきました。その中で先生は次のように述べておられます。

 「ノーベル賞をもらうことは多くの研究者にとって夢でありますが、人生の目的ではありません。私として何より嬉しいのは、PD-1阻害剤によって多くの患者さんの命が救われたという事実であります。それだけで私の人生は意味があったと実感できる昨今であります」

 私は、この激動の時代、老若男女すべての人々が開拓者であることが求められていると考えます。それはご自身の人生であったり、病気の克服であったり、試験であったりと形を変えてはいますが、皆、新しい時代を切り開く開拓者であるという本質に変わりはありません。政治に携わろうが、携わるまいが新しい時代を切り拓いていく努力を惜しんではならないのだと思います。

 本庶先生の次の目標は、がん予防ワクチンだともお伺いしております。こういう道を拓く方々と時代を共にできる幸福をかみしめながら日々前進して参りましょう。疲れたら休めば良いのです。休むこともまた心と免疫のアップにつながります。

 さて、ニューズウィーク(2018年12月18日号)にその本庶佑先生がノーベル賞を受賞されたPD-1に関する次のような記事が紹介されていました。

 それはテキサス大学M.D.アンダーソン癌センターのジェニファー・ワーゴ准教授率いる研究チームが昨年、PD-1が効く患者は腸内細菌叢が多様で、かつ特定の腸内細菌を持っているという共通点があることを突き止めたというものです。ワーゴ氏はこれを科学誌の『サイエンス』に発表したのですが、その結果、PD-1の効果を増加させるためには食事やプロバイオティクス(腸内環境を改善する微生物)、腸への便移植などの方法を用いることで腸内細菌叢を活性化すれば良いということがわかってきたのです。これによってワーゴ准教授は癌治療の可能性がさらに開けたと語っています。

 彼もまた人体の謎を解明し、がん医療に新しい道を切り拓こうとしている開拓者の一人です。今後、さらなる実証と研究の進化が期待されるのは言うまでもありません。それほどがん医療は日進月歩の状況なのです。

 事実、これまでの研究で「1073R-1乳酸菌」、つまりR-1乳酸菌が癌細胞を攻撃したり、破壊する能力を高める力を持っていることが大規模調査で判明しております。しかも免疫細胞の6~7割が密集している腸には免疫の司令塔としての働きがあることについても今や世界の研究者が注目しているほか、さらに別な情報では脳にも免疫を司る働きがあることが最近の研究でもわかってきたと言います。つまり脳と腸が癌を叩くために必要な免疫細胞の鍵だということが、ようやく知られてきたのです。いわば海外ではがん撲滅のための鍵のありかを巡って熾烈な競争が起こっているのです。

 今後は脳と腸管ががん撲滅のためのニューフロンティアとなるに違いありません。そして人体にはまだ多くの謎が秘められているのです。その解明に向けて世界は大きく動き出そうとしています。
 道を拓く!
 いつの世もこうした人々がいなければ時代は動きません。道を閉ざす人々よりも道を拓く人々を応援する日本と日本人でありたいと願うのは私だけではないと考えます。

 厳冬を迎える日本列島でも必ず春は訪れます。
 御多忙と存じます。どうぞご自愛ください。

中見利男拝

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