涼風の候、皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。
またこの度の台風被害によって被災された皆様にお見舞いを申し上げますとともに一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
さて、9月27日のことです。この日、ウイルス療法HF10のPMDAへの申請が取り下げられたとのニュースがありました。対象はメラノーマですが、申請を行っていたタカラバイオによれば、『治験結果から再生医療等製品の条件、期限付き承認の要件の一つ「有効性の推定」が可能と判断したが、申請後のPMDAとの協議で一般の抗がん剤と同様の有効性評価が求められるとの見解が示された』ということです(傍線筆者)。
たしかにメラノーマは最近複数の薬剤が承認されていますので、抗がん剤等と同じ条件で、ということでしょう。
しかし、それにしてもこの情報から想起されることは、私が以前、PMDAの重鎮が『ウイルス療法のG47Δに対しても抗がん剤同様の二重盲検を求める』と公言していたという情報です。詳細をご存知でない方のために概要を述べておきましょう。
実は過日、私の取材で『藤堂具紀教授のウイルス療法に抗がん剤と同じく二重盲検を求める』とPMDAの重鎮が繰り返し公言しているとの情報が入りました。
そこで膠芽腫や小児がん、すい臓がんの患者の皆さんは時間との闘いであるため、二重盲検(薬効とプラセボ効果を区別するために一部の患者に偽薬を投与する検査方法)を求めるということは倫理的、道義的に問題があるのではないか、と私のHPに記事を掲載したところ、それをお読みいただいた膠芽腫の患者の御家族の方がPMDAに、これは本当なのか、と確認のメールを送られたのです。
すると先日、PMDA側から、そのご質問に対して、『PMDAにおける承認審査業務は、科学的根拠に基づき実施しておりますので、ご指摘のURL(私のHPです)に記載のような事実(二重盲検を求めるというPMDAの重鎮の発言)はございません』とご丁寧に回答いただいたのです。
つまり、そのような話はなかったと否定されたわけです。
話を戻しましょう。
HF10のメラノーマに対する申請取り下げが意味するところを解き明かせば、メラノーマのように薬剤が多く存在するがん種に限り抗がん剤と同様の基準を求めるのか、それともPMDAはHF10の前例を盾にウイルス療法G47Δにも同じ条件を求めてくるつもりなのか。
問題はそういうことでしょう。
今、改めて私がPMDAに申し上げたいのはHF10のメラノーマ申請の取り下げ理由を前例に使ってG47Δの申請に対する高い障壁をくれぐれも築かないでいただきたいということです。
打つ手の限られた膠芽腫やすい臓がんなど希少性がん、難治性がんの患者の皆さんを救う可能性のあるG47Δに対してまで二重盲検を求めることのないようにしていただきたいのです。これは決してG47Δへの特別扱いではありません。希少性、難治性がんの患者の皆さんに対する救済措置です。
『PMDAの皆さん、国民はあなたたちのことにこれまで以上に注目しています。がん患者のためのPMDAであるように、強く私からお願い申し上げます。立ち止まるな日本! 立ち止まるなPMDA!』
追伸、先日、ハマリョウさんとすい臓がんサバイバーのキノシタさんがお会いされて和解したというお話をお伺いしました。お2人のご英断は本当に素晴らしいと思います。
そして患者会あるいは患者ネットワークとは本来、標準治療の情報はもちろん、お2人が積極的に推進されているような患者の皆さんの治療選択の情報を強くする存在であるべきだと考えます。
そのモデルケースとしてお2人の患者会が益々ご発展されることを心よりお祈り申し上げます。
どのがん種であれ、日本のがん患者会がお互いに励まし合う活動になっていくことが結局は患者の皆さんのためになるのだと思います。
第5回がん撲滅サミット入場エントリーを受付中です。11月17日(日)午後1時~東京ビッグサイト7階 国際会議場でお会いしましょう。
御多忙と存じます。どうぞご自愛ください。
中見利男拝