『不易流行と武士道 令和元年~ウイルス療法Ⅱ~』

 残暑お見舞い申し上げます。
 おかげ様で第5回がん撲滅サミットの入場ご希望者の受付を8月27日(火)午後3時~開始いたします。歴史的なサミットになるように益々尽力させていただきます。

 特にがんを撲滅しようというチャレンジ精神を持っておられる方や先端医療を知りたいと考えておられる皆様のご応募を心よりお待ち申し上げます。

 さて、ウイルス療法の件をお読みいただいた方から多くの反響がありました。

「自分もおかしいと思っていました」
「PMDAの幹部はいったい何を考えているのでしょうか」
「ぜひ、ウイルス療法が承認されるようPMDAの皆さんも妙なことを主張せず、患者のために頑張ってください」等。

 もちろん、ほとんどの皆さんが希少がんや難治性がんの対抗策となる治療法への二重盲検絶対主義という旧態依然とした考え方に疑問を呈されておられます。

 では、新薬や医療機器の承認期間のPMDAとは何でしょうか。
 1979年に医薬品副作用被害救済基金が設立されました。その後、1987年に医薬品副作用被害救済・研究振興基金に改組され、やがて1997年に国立医薬品・食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター設立。それが2004年独立行政法人医薬品医療機器総合機構となりPMDAとしてスタートしたわけです。

 PMDAのHPを確認すると、その役割はこうです。
 『医薬品の副作用や生物由来製品を介した感染等による健康被害に対して迅速な救済を図り、医薬品や医療機器などの品質、有効性および安全性について治験前から承認までを一貫した体制で指導、審査し、市販後における安全性に関する情報の収集、分析、提供を行うことを通じて国民保健の向上に貢献すること』
 ひじょうに前向きな組織です。

 しかし、心筋シートで有名な再生医療の澤芳樹教授(大阪大学心臓血管外科)は2012年に起きたある出来事に憤慨されておられます。以下は『Medical Note』のインタビュー記事です。

『たとえば、(心筋シートの)治験を行う前には、再生医療製品も従来の医薬品に対する規制に従いランダム化比較試験(RCT)を行うべきではないかという声があがりました。』

 このRCTとは簡潔に言えば、いわゆる二重盲検で、臨床試験に参加する患者を無作為に処置をする集団と効果のない偽薬(プラセボ)を用いる集団に分けて治療効果を客観的に評価する検証方法です。

 これに対して、澤教授はこう語っています。
「再生医療とは他に選択肢がなくなってしまった重症の患者さんに対して行う医療という大前提があります。早期に治療を行わなければ死に至る危険性もある疾患を抱える患者さんに対し、効果のないプラセボを用いる試験を行うことは、当然ながらできるものではありません。」
 そこで澤教授は行動を起こします。
「このときに生じた憤りを力に変え、私の所属する日本再生医療学会は薬事法の改正に向けた提言を行いました。」

 皆さん、ここで何かを思い出しませんか? 前回、藤堂教授のウイルス療法の現状についてご紹介した際にPMDAの幹部の方が「ウイルス療法も二重盲検をやるべきだ」と発言された、という情報そのままの構図ではありませんか。
(ちなみに、ウイルス療法は薬機法でも再生医療等製品に属し、悪性神経膠腫という希少がんが対象ですので希少疾病用製品にも指定されています。また先駆け審査指定品目に指定されています。)
 あえて付言すれば前述の澤芳樹教授らの行動によって「現行の改正薬事法において、細胞加工製品などの再生医療製品の開発・承認審査に際して必ずしもRCTを求めない」とされたのです。これがウイルス療法に適用されないというのなら先の幹部の方の主張は矛盾していることになりませんか。

 つまり、心筋シートのときもそうですがPMDAあるいは国の新薬、医療機器承認の場ではともかく難病であろうが、希少がん難治性がんであろうが、二重盲検をやるんだ、という強い意見が一貫して存在し続けてきたということです。

 たしかにエビデンス中心主義という考え方でいけば、理は叶っているのでしょう。しかし、難病を抱えつつも、その治療法に希望を抱いている患者の皆さんに偽薬を投入したり、偽りの治療を実施することに、なんのためらいがないとすれば、それはむしろ人間の心を喪失しているとしか思えません。

 全員がそういう考え方なのか、それとも一部の人々がそうなのか? そのあたりは今後の精査が必要です。何とか患者のためのPMDAになっていただけないものか、と心を砕いているときに、こんな情報が入って参りました。

 それは長年にわたり新薬承認の現場に存在し続けてきた有力者がいるとのお話です。
 そこで、そのPMDA重鎮の方のプロフィールを確認してみますと、その人物は1997年から先にご紹介した国立衛研医薬品医療機器審査センターにて新薬承認審査に従事。
2011年からは政府中枢に入り、さらにはPMDAの要職に就くと2019年にPMDA幹部就任という素晴らしいご経歴をお持ちでした。

 つまり1997年~2019年までおよそ22年間の長きにわたり1人の医師が新薬承認の中枢、あるいはその周辺に存在し続けてきたわけです。こうなれば新薬承認の権力者です。

 もし、この人物が医師として断固として二重盲検には反対すると唱えておられたにもかかわらず、それが抵抗むなしく排除されたとすれば、話は別ですが、逆に旗振り役であった場合、これは悲劇です。

 なぜなら新薬承認という日本の医療行政を采配する重要な立場に立つには公平性がある程度、求められることは言うまでもありません。当然、この人物の考え方は新薬承認に際して大きな意味合い、つまり影響力を持つわけです。

 つまり一人の医師が22年もPMDAなどの医療審査に関与し続けていれば、あるいは関与できる立場に立ち続けていれば、その人物の考え方や思想如何によって自ずと公平性が著しく欠如することもあり得るのです。

 先ほど述べたようにこの人物には今後、PMDA重鎮として5年の任期が与えられます。したがって、これまでの22年と合計すれば27年、すなわち約30年間もの長きにわたり日本の新薬、医療機器の承認に対して一人の医師が強い影響力を持ち続けるのです。そんなことはない、PMDAは合議制だからという言い訳は通用しません。理由は、もはやその人物が新薬承認におけるシンボルであり、最終的なPMDAの裁定印を捺す存在だからです。

 しかし不思議に思うのは、たとえば心筋シートとウイルス療法という日本人が先駆的に開発した治療法をことごとく否定し、日本の医療を周回遅れに導こうとする新薬及び医療機器承認制度とは一体何なのでしょうか。

 やはり私の知人(この方は情報分析のプロです)が言ったように「反政府活動、反日思想家の領域の人物が承認現場を支配しているのではないでしょうか? 精査する必要があるのではないですか」との言葉が想起されて参ります。とは言え、人間改むるに憚ることなかれ、です。

 藤堂具紀教授のウイルス療法に対してもPMDAの重鎮に方針の転換をぜひとも期待したいと思います。
『立ち止まるな!PMDA!!』
 そこで私は主張します。
①藤堂教授のウイルス療法は仮承認ではなく本承認とすること。なぜなら、仮承認であれば定期的に見直しがあり、つねに治験を継続しなければならないからです。下手をすれば二重盲検を強要され続けるかもしれません。本承認であれば、その必要はありません。

②全がん種への適用を前提とすること。すべてのがん種にわたり二重盲検をやって治験承認を続ける間に何人もの患者の方々が力尽きるかもしれないのです。その人々を救う義務が国民の税金で成立しているPMDAにはあります。当然、民意を吸収しなければなりません。これをぜひとも国を挙げてオールジャパンで実行しようではありませんか。

 今後、PMDA重鎮が日本の医療の立役者になるのか、どうか皆さん注目して参りましょう。なぜなら、PMDAとは多額の税金が投入される準公的機関の一つであり、そこに関与する人々はもはや公的人物だからです。

 PMDA重鎮及び重鎮傘下の例のグループの皆さん、ぜひとも患者の皆様のためにもよろしくお願い申し上げます。
 暑い日が続いておりますので、どうぞご自愛ください。

追伸、がん撲滅サミットは政府のご後援をいただいておりますが、公的資金は一切いただいておりません。したがって、あくまでも民間主導です。またがん撲滅サミットだけががんを撲滅するのではありません。広く国民の皆さんと共に実行しなければできるものではありません。

たとえば、腸管免疫の研究者だけががんを撲滅できるとは現時点で彼ら自身も考えていないのです。なぜなら免疫系の司令塔は脳にも存在しており、総合的に免疫全体を司っていることが、最近になって学術的に判明したのです。まだまだ免疫に関しては解明しなければならない点が多い事は言うまでもありません。

現在も必死になって人類のためにがん新薬や新治療の研究をしている人々を心から応援しようではありませんか。

中見利男拝

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