『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』(https://cancer-zero.com)が2023年11月3日(金・祝)正午より大阪国際会議場5Fメインホールにて開催される。
本日は、その『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』提唱者で代表顧問の中見利男氏(作家・ジャーナリスト)との一問一答をご紹介したい。
――以前より活動的になっていますね。体調は大丈夫ですか?
中見 ありがとうございます。2022年4月6日に心筋再生シートの手術を受けた後、安静を保っていましたが、おかげ様で徐々に回復しております。ずい分、皆様にはご心配をおかけしました。
――大変でしたね。顔色もよくなっておられますね。
中見 ありがとうございます。昨年もそうでしたが、まだ副症状があるので完全回復とはいきませんが、10%台しか動いていない私の心臓も頑張ってくれています。
――お大事になさってください。ところで中見さんは医療の仕組みを変えるとおっしゃっておられますが、これについてもう少し詳しくお願いします。
中見 これまでの医療は行政と医療者ファーストで仕組みが決められてきました。その結果、患者にとっては血の通っていない医療、特にがん医療の場合はそれがまかり通ってきたのです。たとえば患者の生きたいという強い気持ちを無視して、あとは緩和しかありませんと突き放したり、心ない言葉を浴びせたりという事態が横行していたのです。
――それを変えるためには、まず医療の仕組みを変えなければならないと?
中見 その通りです。具体的に言えば、小児がんや難病の患者の皆さんが治験を受ける場合、一刻を争うというときに正常な薬剤を投入するグループと偽薬を投入するグループに分けて、どちらかのグループに所属しなければならなかったのです。脳梗塞などで体が不自由になっている人たちや小児がんで苦しむ子どもたちにとって、それは倫理的に問題があるのではないか? なかには泣く泣く患者に偽薬を投入しなければならない医療者の方々もいます。エビデンスは確かに重要ですが、その前に人命が大事なのではないか? その思いで私は厚労省の高官と協議を重ねてきました。
――なるほど、その成果ができましたね。確かに厚労省は小児がんや難病患者に対して偽薬を投入しない治験を推進していくという方針を固めたようですね。世界がん撲滅サミットがやりたいことというのは、つまりこういう事でしたか?
中見 そうです。他にもまだあります。私はPMDA改革を進めるべきだと申し上げているのは治療薬の世界はどんどん進化してきており、今や寛解を目指すだけでなく進行を抑制する治療にもスポットライトが当たってきました。アメリカがエーザイの認知症薬を承認したのは、この進行抑制治療に着眼したからです。
ところが日本はゼロイチで治るか、治らないかだけで判断しています。その間に進行を抑制する治療薬が世に出されたなら、時間を稼ぐこともできるし、共存も可能です。
こうした観点を柔軟に取り入れなければならないのですが、旧態依然として進行抑制治療薬を退けている。
――一国を代表する審査機構ですから、そんなに易々と判断を変えて良いとは思えませんが、むしろそれが国益にかなうかどうかよりも、それが効くかどうかが大事なのではないでしょうか?
中見 国益にかなうかどうかではなく患者の負担を軽減できるかどうかの話をしているのです。進行抑制治療はまさにそれに当てはまります。がん予防薬にしても大局的には進行抑制治療の1つです。
――わかりました。
中見 私が今大会で申し上げたいことは医療でさえ聖域化するのではなく、患者に寄り添った治療や対応にそろそろ切り替えるべき時が来たということです。抗がん剤の副作用で苦しんでいる患者の皆さんから医療者の皆さんは、どうか目を背けず、どうしたら副作用が少なくなるかを考えてみてください。がんが治るなら患者が死んでもかまわないという治療から、がんを治すことで患者を生かす治療に変えていこうではありませんか。
――なるほど患者を生かす治療ですか。
中見 当然のことだと思いますね。しかも患者の心をへし折ってでも自分の治療を押し付けて患者を支配するという考え方は間違っています。そうではなく患者の皆さんには希望の光を見る権利がある。それがすなわち憲法でいう生存権です。
――だんだんと仰る意味がわかってきたように思います。
中見 世界がん撲滅サミット2023 in OSAKAは患者の皆さんにとって希望が持てる仕組みとは何かを考え、それを実行することで皆さんを励ましていく、力強く前を向く、今までの自分や家族、知人、医療者に感謝できる世の中にしたいと本気で願っているのです。ニュースを見てください。驚くほど殺人事件が増えているではありませんか。今は人の命の扱い方がとても粗雑になっている気がします。だからこそ命の尊厳を大事にしようという我々サミットのような存在があっていいのではないかと思いますね。それからもう斜めに物事を見る時代は終わりました。斜めに見ている間に国民はあっという間に情報の渦に飲み込まれてしまうのです。アクションを自ら起こさなければ。
そこで我々は2025年開催される大阪・関西万博のレガシーとして大阪にあるPMDA関西支所にこれまでの相談業務以外に遺伝子医療や再生医療、進行抑制治療などの審査機能を付与して、これを強化しようという提言活動を開始しました。ありがたいことに大阪府では副知事の山口信彦氏を中心としたチームが組まれ、ワンチームとなってこれを推進しようという動きが起きています。これによって日本を製薬や医療機器のリーダーにしていくのです。そして患者の皆さんは、その恩恵を迅速に受けることができるのです。
――これまで様々なことがあっても乗り越えてここまで来られたのですから、ぜひ初志貫徹していただきたいと思います。さて今年は昨年のサミットとどういう違いがあるのでしょうか。
中見 今大会はいよいよ米国のマーク J. ラテイン教授が来日されます。ほかにもまだ発表できませんが、交渉を行っていますので文字通り世界大会にふさわしい内容となっていると思います。また今大会から公開セカンドオピニオンがバージョンアップします。
――バージョンアップ? どういうことでしょうか。
中見 たとえば国立がん研究センター中央病院の歯科医長の上野尚雄(たかお)先生や心臓血管外科の市原有起先生、診療看護師の荒木田真子先生のご登壇がそれです。口腔内の問題とがん治療の関係は密接なものがあり、今やがんの原因の1つは口腔内の細菌にあると言われています。心臓にしても治療の副作用で血栓が心臓に飛びやすくなり心疾患のリスクも存在しているのです。がんを叩いても別の病気で健康を損なっていいわけがありません。そこで今大会より公開セカンドオピニオンは総合病院態勢をとることにしたのです。
――なるほど、趣旨は良く理解しました。ところで今大会から前内閣官房副長官の杉田和博氏が特別顧問に就任されましたね。良く大物中の大物を口説いたものだと評判ですよ。
中見 がん撲滅というとき、皆平等の立場にあります。杉田先生には誠心誠意お願いし、またそれを快諾してくださったということですね。大事なことは杉田先生には、医療の先進情報が流出していないかどうかについて目を光らせていただけると思います。日本で開発した新薬や新しい治療法が日本で認められないこともまたおかしな出来事だと思います。
――その通りかもしれませんね。たしかに米国のものは認めて日本の薬は米国が認めてから承認する。この繰り返しですからね。
中見 だからこそ、おかしなことはおかしいと声を上げねばなりません。私はたった1人からでも声を上げることで世界を変えることはできると思います。もちろん逆風があります。しかしそれに負けていてはならないのです。たとえ成就しなくても、次の世代、まだ次の世代がそれを受け継いでいくことでしょう。なんと言っても人類の営みを馬鹿にしてはいけない。人類は一歩一歩失敗を糧にしながら常に新しい技術や仕組み作りにチャレンジしてきたのです。ところが今、日本にそのチャレンジ精神が失われています。だからこそ今、我々が希望の光となってこの国のチャレンジ精神を覚醒させたいのです。日本は、日本の医療はまだまだこんなもんじゃないんだと。
――たしかにチャレンジ精神は失われていると思いますね。その代わりに失敗した人は徹底的に叩くという風潮が広がっていますね。
中見 一国のリーダーは希望を国民に見せる必要があります。同様に医師も患者に時に冷酷な事実を伝えなければなりませんが、絶望の淵に叩き込むばかりではダメです。現在、米国のデータでは50代前後のがん発症率が格段に高まっています。そんな時期にがん医療内で叩き合っている場合ではないのです。標準治療は素晴らしいし、王道を走る治療です。しかし同時にがん予防と先進的治療の開発は加速的に進めていかなければならないのです。チャレンジが重要なのです。こっちが最善最高だ、などと主張し合って立ち止まっている場合ではないのです。
――だから前進しなければならないというわけですか?
中見 仰る通りです。どんな逆風を受けても我々は歩みを止めません。たとえ私が倒れても次の世代、また次の世代ががんを撲滅してくれる。私自身、そういう希望を失っていません。また我々は患者の皆さんの希望の光となれるよう、できることは時間がかかってもやり遂げたいと思います。
――ありがとうございます。今年も素晴らしいサミットになることを期待しています。最後に皆さんに一言お願いします。
中見 ありがとうございます。人間の本当に強力な力はなんだと思いますか? 超能力とか、そんなものではありません。もっと強い力があります。それこそが『誠心誠意』という言葉であり、考え方です。誠心誠意、事に当たる。増長したり、エゴイズムに陥るのではなく、誠心誠意、力を尽くす。つまり希望の光とは誠心誠意、生きていこうと決めた人間にのみ灯る心の明かりなのです。そういう意味で我々や、このサミットは患者の皆さんの希望の光であり続けたいと思います。皆さん、ぜひ11月3日『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』でお会いしましょう。本日はありがとうございました。
皆さんもぜひ、『世界がん撲滅サミット2023 in OSAKA』に参加されてみてはいかがだろう