入梅の候、皆様におかれましては益々ご清祥のことと存じます。
5月21日に第5回がん撲滅サミット永世大会長 北島政樹先生が急逝されました。この悲報は日本はもちろん世界の医療界に激震が走り抜け、11月17日に向けて準備を進めていた第5回がん撲滅サミットの開催についても危惧されることとなりました。
しかし、御生前、北島先生はいつも私にこう仰っておられました。
「医師は時として天に逆らってでも患者の皆さんを見放さず治療をすることが大事です」
「現在のがん医療に必要なのは革新的なイノベーションですよ。優れた医療機器や治療の開発にもっと日本も世界のトップリーダーになる覚悟で臨まなきゃなりませんよ」
「本当のチーム医療というのは老壮青3世代の医師が同じ方向を見て同じ理念の下に実行されなければならないんです。特に老を担う医師は未来を見据えたプロデューサーでなければならないと思いますよ。一人でもベルトコンベアのように患者の方々と接していたり、簡単に見放してはならないんです」
このようにお話をされたあと、こう続けられました。
「この日本の医療界には真の意味でプロデューサーがいないんです。がん撲滅サミットが目指す方向性はここにあると私など思いますよ」
と激励をしてくださいました。
私は今でも北島政樹先生がお亡くなりになったということが信じられず、時折、返信が来ないままになっている5月21日午後3時45分に発信した私のメールを見直すことがあります。
巨星墜つ!
まさに、この心境で、ここしばらく呆然としておりましたが、先にご紹介した北島政樹先生の御言葉は、私一人に仰ったのではない。広く日本人全体に第5回がん撲滅サミットで伝えたかった先生の理念そのものなのだ、と改めて気づいたときに覚醒が訪れました。
『陽はまた昇る!』
そうです。翻ってみれば、一部のグループの意図的な攻撃からがん撲滅サミット2016以来の試練を乗り越えてきたのも、すべては不屈の精神でがん撲滅を実行せよ、というこれまで「がん」で亡くなった方々の激励と我々に対する鍛錬そのものだったのでしょう。
皆さんもご存知のように大会HPやポスター、チラシ、大会パンフレット、入場チケットなど、がん撲滅サミットのイメージはすべて太陽が昇りくる姿そのものです。
これは私自身が重篤な心臓病で闘病生活を送っているときに、夜明け前に深い闇を打ち破って陽光が差し込んでくる病室の中で「ああ、今日も生きていたなぁ」としみじみと生を実感し、気力を奮い立たせたときの記憶に基づいた構図です。
北島政樹先生は冒頭にご紹介したようにこう仰っておられました。
「医師は時として天に逆らってでも患者の皆さんを見放さず治療をすることが大事です」
であれば、医師ではない私ができることは何か?
それは、もし太陽が昇らなければ自分の手で太陽を引きずり出してでも天に輝いてもらおう。
それが今の私の覚悟です。
おかげさまで総理官邸、厚労省、そして関係者の皆様のご尽力によって『全ゲノム解析によるがんゲノム医療』が保険適用となりました。
勇気ある患者の皆さん、政府の改革的かつ有能な方々、志ある人々によって世界のリーダーを目指す土台が着実に築かれております。
例えば日本が世界に誇るPMDAの先駆け審査指定制度に関しても日本の足を引っ張ろうと各国凌ぎを削って工作を仕掛けて来るのは当然です。そういう抵抗勢力は、いつの時代も現れてくるものです。しかし怯んではなりません。
我々はこれからも前進を続けて参ります。
そして、がん患者の皆さんの生命が昇りくる太陽のように生き生きと輝くものになっていただくためにも、北島政樹永世大会長の御遺志の下、第5回がん撲滅サミットの新しい体制を構築して参ります。
詳細の発表まで今しばらくお時間をいただけますと幸いです。
『陽はまた昇る!』
中見利男拝