『不易流行と武士道2021~風穴を開けろ!~』

 薫風の候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

 おかげ様で『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』の大会HPも5月19日(水)午後3時より順調にスタートを切ることができました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、以下は近況です。

 2021年5月24日(月)に開かれた厚生労働省専門部会における審議会で膠芽腫を対象としたウイルス療法G47Δ(デルタ)の条件付早期承認について、これを認めるという方針が決定した。

 これは脳幹グリオーマの患者の皆さんにとっては大変な吉報である。
 しかも正式承認されれば日本初の出来事であり、同時にこれまでウイルス療法の、その前に立ちはだかっていた壁に風穴が開くことになるわけだ。

 しかも、G47Δだけではなく再生医療全体に横たわり続けてきた巨大な壁にも今回風穴が開いたという事実は重要だ。

 あえて申し上げるなら、今回のような日本初の創薬や新しい治療法、医療機器に対する申請承認に向けた関門の突破こそ我々ががん撲滅サミットを旗揚げさせていただいた本旨なのだ。

 果たして、これ以上打つ手のない希少がん、難治性がんの患者の皆さんに対して第3相と称して偽薬を投与し、様子をただ見守りデータを取得するだけでよいのか。

 また日本人が世界で初めて開発した治療法や医療機器に対して、それを専門家と称する人がもっともらしい論評や批判、批評を投げかけるだけで、国の医薬品・医療機器行政が簡単に左右されて良いのか。

 なぜなら開発者や発見者に勝る専門家など、この世に存在しないに等しいからだ。あくまでも彼らは既存の治療法の専門家であって、その分野ではトップランナーであっても新しい治療法においては決してそんなことはないのだ。

 あるいは既存の権益を守るために意図的に妨害をしていても、その真偽は不明なのである。

 こうした状況の中で希少がん、難治性がんの患者の皆さんのための新しい治療薬や治療法など永遠に生まれないのではないか。

 そういう危機感が私にはあった。そして今回のウイルス療法G47Δにおいても少なからず前述のような論評や圧力の存在を開発者から伝え聞いていたのである。

 「ならば巨大な壁に風穴を開けよう!」
 こうして我々は立ち上がり、前進を開始した。

 その経緯については以前、本HPの記事でも詳細を記させていただいたところだが、今、日本には新型コロナウイルス禍に対して評論家がメディアや巷にあふれている。

 しかし我々は「100の議論より1つの行動」を胸にPMDA改革を求めて厚労省の担当者とも協議を重ね、お互いに改善すべきは改善していくこと、1日も早く患者の皆さんにG47Δという果実を届けようという点で一致した。

 もちろん科学的なエビデンスに基づいたデータや生産技術が伴わないものでは当然、申請承認は無理だが、幸い藤堂具紀教授や技術陣の努力によって、こうした問題はクリアされていたのである。

 中にはPMDAに触れることはタブーだという声や批判もあった。だが気が付けば、この国は巨大な壁を張り巡らされた閉塞感に満ちた国家へと変貌しているし、また国民はそれに慣れてしまっているのではないか、という大きな疑問が我々の背中を押してくれた。

 「ならば、巨大ながん医療の壁に風穴を開けよう!」

 ご存じのようにG47Δというウイルス療法はウイルスの遺伝子を人工的に改変するものだが、カルタヘナ法といって天然由来の生物や素材には人工的に手を加えてはならないという世界的な憲章が日本では法律として不抜のように横たわっていた。

 しかも厚生労働省が関与しているため、これまで医療面で絶対に、この扉が開くことはなかった。

 しかし我々はPMDAとは別にこうした問題とも向き合うことを恐れなかった。その結果、医療用については安心安全な技術であることを確認できれば、これを容認するよう厚労省に働きかけを行い、なんとかクリアすることができたのだ。

 そこからウイルス療法G47Δは動き出した。

 言わずもがなだが、日本では医療界の巨大な壁を前にして様々な研究者や医療者、いや患者の皆さん、ご家族の皆さんが地団駄を踏んできたことは今さら言うまでもない。

 しかし、今、私はこう言うだろう。
「さあ、我々と共にこの壁に風穴を開け、希望ある日本の未来を作っていこう!」と。

 そのためには巨大な壁を丹念に調べて壁の性質や材料、工法を分析することも大事だ。しかしまず壁に風穴を開けるという行為そのものを日本人は恐れてはならない。
 それが未来の子どもたちのためなら、なおさらだろう。

 今後、G47Δの正式承認に向けて、まだまだ壁はあるに違いない。しかし、我々は恐れない。

 なぜなら「目の前に巨大な壁が立ちはだかっているのなら、まず風穴を開けよう!」という信念は永遠に変わらないからだ。

 そのうえでこれから我々はすい臓がん治療に携わる気鋭の医療者、研究者やすい臓がん患者、ご家族の皆さんと共に梁山泊のようなネットワークを構築していくだろう。

 その後、すい臓がん治療の前に横たわる巨大な壁にも堂々と風穴を開けていくつもりだ。

 希望ある日本の未来のためにも、大事な時間と人生を歩み続ける患者の皆さんのためにもこの国には今こそあらゆる面でブレークスルーが必要だ。

 皆様、新型コロナウイルスにくれぐれもお気をつけて、ご自愛ください。

 追伸、おかげさまでこのHPでも主張してきたように厚労省とPMDAは緊急時には倫理的、人道上の問題に配慮。

 これまで正式な薬品を投与するグループと偽薬を投与するグループに分けて比較を求めて来た大規模な第3相治験で、こうした手法に代わる措置として既存の薬品等のデータとの比較だけで速やかに承認出来るよう新しいシステムの構築に動き始めたようだ。

 こちらでも巨大な壁に風穴が開こうとしているが今後は希少がん、難治性がんに対しても生命の緊急事態と認識して緊急時承認を適応すべきだと私は考えている。
 ブレークスルーの秘訣は決して諦めないことだ。

中見利男拝

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