初夏の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、今回は『陽はまた昇る2021』をお届けいたします。
主治医が奇跡だと称してくれた私の闘病生活は、まだ続いている。
今は『日常を取り戻す』がスローガンだ。
これもいずれは『ピークを取り戻す』に変わる時が来るだろう。
そのためには焦らず、立ち止まらず、ときどき休憩の精神が大事だと言い聞かせている。
とはいえ、こうして命を再三再四与えられて戻ってくるたびに目標は明確になってくるものだ。
その1つは、希少がん・難治性がん、とりわけ、すい臓がんに対するブレークスルーだ。がん患者が少数だからマーケットは限りなく小さい。だから治療薬や治療法の開発が進まなかったとこれまで考えられてきた。
しかし、それは間違いだ。
なぜなら公益的な考え方が重視され始めた昨今では、希少がんや難治性がん患者、そして小児がん患者を救おうと考える企業や医療機関こそが本物ではないかと思うのだ。
たとえば、災害が起きても今回は被災者の数が少ないから救出しなくてよいだろうと考える消防庁、救命救急医、警察、自衛隊が存在するだろうか。
今回、自分は助かったからほかの人まで救わなくて良いですよ、と考える人がいるだろうか。
後者の場合は、心の中まではわからないから本当にいるのかどうかは不明だ(そんな人はいないと信じたい)が、前者の場合は言語道断だ。被災者が1人でも2人でも救いに行かねばならない。
困っている人がそこにいれば、1人でも2人でも人間として当然のことを当然のようにやらなければならない。ただ、それだけのことだ。
『世界がん撲滅サミット2021 in OSAKA』の原丈人大会長は、今や『公益資本主義の父』と呼ばれているが同氏の説く『公益資本主義』の根本理念とは、まさに人間が人間らしく生きていこう。
そのためには、たとえ困っている人が少数であっても、これまでの悪しき資本主義の囚われ人になるのではなく自ら救出に立ち上がろうではないかと人々に呼びかけるものだ。
しかし人々の心は確実に冷え込んできている現在、公益よりも私が優先され、なかには「自分は健康だからがん患者のことなんか知らないよ。」と考える人もいるだろう。
だが、私はそういう考えにはならない。たとえ少数でも、そこに困っている人がいるのなら救いに行きたいと願う1人でもある。まして国家から免許を与えられた医師なら、たとえ少ない患者でも1人でも救いたいと思うものではないだろうか。
前述のように自分だけが良ければそれで良いという考えを持つ人々が医療者や企業家の間に広がることは、すなわち亡国を意味する。また少数の人々を救おうと懸命に手立てを考える人々――医療者や企業の足を引っ張る人々が多くいるならそれもまた亡国の一途だ。
極論かもしれないが、今は米軍が正式にUFOの報告書を世界に向けて発信する時代になっている。
私は1995年に発刊させていただいた初めての著書の中で、米軍部に取材したうえで『米国(米軍)は2015年ごろからUFOに関する情報を公開してくるだろう』と予測している。
6年程早すぎたかもしれないが、トレンド上はその通りになった。
その理由は3つだ。
1つは古い兵器と新しい兵器の交換時期が過ぎようとしているからだ。よりハイレベルな兵器を配備するためにも仮想敵は得体が知れず、強大な力を秘めている方が良い。
2つ目は本当に正体不明の飛行物体の存在を確認し、もはや隠している段階ではなくなったからだ。
そして3つ目は新型コロナウイルス同様に人類が一丸になって立ち上がらねばならぬ相手が本当にいるかもしれないと人類全体の意識を覚醒に導くためでもある。
私が著書内でUFO問題に触れたとき、これをトンデモ本扱いする人もいたが、今や地上波の正式なニュースでも取り上げざるをえないところまで来ているのだ。つまり、時代は変わったということだろう。
今後、時代はさらに激動期を迎えるに違いない。そんなとき政治はもとより医療も旧態依然のままでよいわけがない。
とはいえ常に先を見て今の課題を乗り越えていく人々が少数といえども存在していれば、その国は亡国への道をひた走らずとも救われるだろう。
幸いに、たとえば抗がん剤の副作用を何とか軽減したいといち早く取り組まれている大阪国際がんセンターの乳腺・内分泌外科の中山貴寛教授もその1人だ。
またいち早く病院内にすい臓がんセンターを立ち上げて、すい臓がん治療の強化に乗り出した和歌山県立医科大学のすい臓がんセンター長・山上裕機先生もまたその1人だ。
さらに、すい臓がん治療に日々取り組まれ、激しい副作用に見舞われながらも他のすい臓がんやがん患者、ご家族を励ますためにブログを発信されているすい臓がんサバイバーの高村僚さんもその1人である。
今の私にとって偽善は不要だ。偽善ではなく真実が大事なのだ。そのためにもこうした誠心誠意、未来のために闘っている人たちとのネットワークが必要なのである。
こうしたネットワークが、たとえ少数でも存在する限り、この国から陽はまた昇るだろう。
なぜなら、死地から脱した私が命がけで彼らを支援し、活動を推進していく、その源になる、いやなってみせるという覚悟があるからだ。
そして、これこそが私の周囲で奇跡を起こすよう私自身を導いてくれた人々に対する恩返しなのである。
今から預言しておこう。
今回の日本の復活は大阪から始まる。
そう、大阪から陽はまた昇るのだ。
そこに理由など不要だ。だが、1つだけ付言するなら、かつて適塾、合水堂という2大西洋医学のセンターを江戸時代に創設し、近隣のがん患者を救ってきた大阪が、そろそろ過去を思い出しルネッサンス(再生、回帰)の精神に立ち返らなければならないときが来たのである。
2025年の万博をイベントにするのではなくレガシーにするためにも、再びがん医療の世界で太陽をつかんででも天に引きずり出す覚悟を大阪の人々が決めなければならない時代が到来した、ということだ。
幸いにも、そのチャレンジはすでに大阪で始まっている。ぜひ期待し、応援させていただきたい。
まもなく梅雨も明け、夏空が広がることだろう。
皆さんもどうぞお元気で。
追伸 権力者の権力とは権(ごん)すなわち仮に与えられた力であることを権力を手にした人物こそ決して忘れてはならない。
敵は新型コロナウイルスであって飲食業の経営者、従業員、納品業者ではない。まして弱者に対して優越的地位の濫用を誘うような発言をした段階で民主主義の国で権力者として振る舞う資格はない。
そのためには心ある民が強くなければならない。なぜなら、勘違いした権力者を世に送り出すのも、また民衆だからだ。
中見利男拝