『不易流行と武士道~堺雅人氏の演じた恩の十倍返し』

 ご無沙汰しております。
 さて、9月16日付で新刊『神社仏閣に隠された日本史の謎と闇』が宝島社(別冊宝島)から刊行されました。出雲大社と伊勢神宮の式年遷宮が重なる2013年は、いよいよ真の天岩戸開きが始まりますが、本書はその号砲となる一冊です。

 我々が学んだ日本史は勝者が編纂したものであり、そこには為政者の都合によって数々の真実が歪められた不自然な作為が込められています。
 その謎を解くことで、これまで何気なく参拝していたその神社やお寺には皇族や貴族、古代豪族の怨霊が封印され、あなた自身が気づかないうちに彼らや彼女たちの鎮魂儀式に参加していたことが明らかになるでしょう。
 そして『日本書紀』『古事記』に仕掛けられたトリックを暴き、抹殺された豪族と追放された神スサノオの真実を明らかにした本書をお読みいただくことで、パワースポット巡りが2倍にも3倍にも楽しくなるはずです。

 また、皇室の三種神器よりも古い十種神宝という秘宝が古代日本に存在し、それを代々伝えてきた物部氏はなぜ衰退し、闇の世界に押し込められて行ったのか、天照大神は本当に女性神だったのか? 秦氏が創建した広隆寺の秘伝、聖徳太子像になぜ天皇が着た衣が着せられるのか、そして空海が高野山に金剛峯寺に仕掛けた驚異の秘密とは何か? 浮かび上がる数々の真実! そしてなぜ、この国が何度叩かれても破滅に追いやられても蘇り復活してくるのか? 
 この本こそ日本版リアル・ダ・ヴィンチ・コードそのものです。ぜひ、ご一読ください。

 さて、日本に未来はないという風潮の議論が巷に渦巻いています。それは老人の洗脳です。未来がないようなことを容易に口にする人物を信用しては損をするだけです。そうではなく、皆さんはどういう状況でもつねに未来を志し、夢を持ち、前進することです。
 でなければ、3.11東日本大震災や病で亡くなった人たちに申し訳が立たないではありませんか。目標の失われたこの国に、新しい目標を打ち立て、未来に向かって飛翔させるのは妙に悟りきった老人ではなく、希望を失うことのない精神的青年です。
 壁を恐れてはなりません。一歩一歩前進する勇気を失うことがあってはいけません。あまりマスコミは取り上げませんが、東京オリンピック招致をあきらめなかったのは石原慎太郎という一人の若き老人です。彼は世間の冷たい反応にもかかわらず私の目の前で「若い人たちに夢を見せてやろうじゃありませんか」と訴え、それを見事に成し遂げた、その原動力なのです。こうした創案者のことを忘れて浮かれ、踊ることこそが日本人の問題点であり弱点です。彼の功績のことを自覚し、年を重ねても夢を忘れない永遠の青年の志を持ち続けることが大事なのです。この国は衰退期どころか再び世界に冠たる国家に返り咲くでしょう。
 その一つが医療であり、防災技術です。これらは今や世界トップクラスを走っており、今後も目覚ましい進歩を続けるはずです。

 たとえば、がん撲滅や異常気象に備えた農業や気候変動を可能にする機関の創設など人類に必要とされるアイデアを次々に創案し、提言し、実行してみせることです。自然によって滅ぼされかねない状況が世界レベルで続いている今、7年後の東京オリンピックが無事開催できるよう首都直下対応をはじめ、南海トラフなどに対応できるように防災技術、気候工学に基づいた気候変動技術への集中投資などによって世界レベルの技術を保有し、それを世界へ伝えていくことが新生日本の取るべき道でありましょう。

 そして五輪決定をただ喜ぶのではなく、当初、東京のイメージが悪化するのを避けるため、福島のことに触れないようにしようなどという愚策で臨もうとした日本の招致活動の問題点を直視しなければ、再び想定外のことで慌てふためくという、これまでと同じ道を辿ることになるのです。賞讃は賞讃、反省は反省と心得、大胆な国際戦略を以って世界へアピールすべきだと思います。地域を愛し、国を愛し、世界を愛する心を持つことは右翼でも左翼でもありません。胴体思想というのです。その境地に立って、国を憂う心を持ち続けることが大事なのです。

 今、TBS系列の『半沢直樹』で視聴率30%男になった俳優の堺雅人さんもその昔、自分が歩む道に対して苦悩されていた時期があります。というのも以前、坂本龍馬の暗号をテーマにしたフジテレビの番組でご一緒させていただいたことがあり、山口の毛利邸でロケを行った際、寒風の入ってくる部屋の中で一時間半にわたって私が坂本龍馬の革命的な新政府構想について堺さんに講義を行うというコーナーがあったのです。もちろんカメラも回っていますが、堺さんは非常に熱心に聞き入ってくださったことを覚えています。特に龍馬の船中八策と暗殺前に彼が書き残した新政府綱領との違いについて詳しく解説しているときの鋭い眼光は今から思えば、あの半沢直樹その人であり、一語一語に真剣にうなずいている姿から響いてくるのは、彼の勉強熱心な役者魂でした。そんな堺さんの迫力に、ただただ圧倒される思いがしましたことを昨日のように思い出すことができます。

 そして毛利邸での撮影が終わり、その後、龍馬のボディガードだった三吉慎蔵にゆかりのある長府博物館に移動しながら堺さんに、引き続き龍馬の事績を解説するというロケが行われたときのことです。控室に入った私に堺さんは、突然、こう切り出されたのです。 「先生、今後、私はどういう役者になったらいいですか?」 ずい分真剣な口調だったので、悩んでおられるのだろうと察した私は、それまでの「微笑みの貴公子」を捨てた方が役者としては成功すると判断し、こんなアドバイスをさせていただきました。
「堺さん、悪役ですよ」
「悪役!?……ですか?」
 堺さんも驚いたのか、一瞬戸惑った表情を浮かべましたが、すぐにこう付け加えました。 「ただの悪役じゃないですよ。善と悪です。善人の顔を持ち、いざとなれば悪人も滅ぼす悪の部分を持つ人です。たとえば藤原不比等ですね」
「藤原……不比等ですか。なるほど」
 勉強熱心な堺さんらしく、すぐ私の意図するところを察知されたのか、うなずきながら、
「実は、先日ある人からも先生が言われた人物を演じた方が良いといわれて迷っていたんですけど、いや、よくわかりました!!」
 そういうと晴れやかな表情になり、その後の撮影にも元気よく臨まれたわけですが、あそこから堺さんの演じる役柄に少しずつ変化が生まれ、今の高視聴率男に成長していったような気がします。もちろん私のアドバイスがあったなどとは言うつもりはありません。
 ではなくて、堺さんでさえ自分の進む道に迷ったりしながら現在の地位にあるのだということが言いたいのです。つまり彼は新しい自分に目覚め、そこに向かって前進したからこそ、今の自分の立場を確固たるものにできたということが言いたいのです。
 個人でもそうなのですから、国も同じです。いつまでも同じことにしがみつくだけでなく、不易流行の精神で変化を恐れることなく新しい世界に飛び込んだり、開発したり、新しい自分に挑戦することこそ、今の日本と日本人にとって必要なことなのです。日本は下り坂の時代に入ったなどという言葉は、老いた心を持った老人の戯言です。若い心を持った老人ならば、これからの日本は上り坂だと言い切るはずです。若者ならば、それ以上にそういう強い気持ちで明日に立ち向かうべきでしょう。そして、それこそが日本の蘇生であり、再生なのだと思います。
 と同時に不易流行と武士道の本質とは、今の堺雅人さんが体現されていることなのです。

 若者よ! 視聴率30%男もかつて進路に悩み、そして人との出会いによって新しい自分にトライしたという事実をぜひ知っておいてください。そして彼は見事にあのときの私に対して恩の10倍返しをしてくれたと喜んでいます。大事なことは、報復ではなく恩の倍返し、10倍返しです。
 ご多忙と存じます。読者の皆様、どうぞお体をご自愛ください。

中見利男拝

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