『不易流行と武士道2019~患者の権利についてⅡ~』

 ご無沙汰しております。
 桜の満開も近く、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 この度、「がん研究10ヶ年戦略」の推進に関する報告書案(中間報告)が厚生労働省の『今後のがん研究のあり方に関する有識者会議』から発表されました。

 その文書の中で注目すべきは、
①『免疫療法においても奏功が期待できる患者、強い副作用が予想される患者を明らかにし、個別化医療を進めていくためにバイオマーカーを開発していくべきである』『新たな免疫療法の開発や免疫療法と手術療法や放射線療法とを組み合わせる集学的な治療法の開発も進めるべきである』など免疫療法の推進に触れる一文や、

②『早期診断方法が確立されておらず有効な治療法も少ない膵がんなどの難治性がんでは早期発見が可能となれば治療成績の向上に直結することも期待される』というすい臓がんなどの患者の皆様に朗報をもたらす一文。

 またリキッドバイオプシーについても、
③『リキッドバイオプシーの開発と同時に死亡率減少にかわる代替指標を開発する必要がある』『体液中のDNAやマイクロRNA、たんぱく質量を解析する技術は実用化に向け進みつつあるが、体液中に遊離しているがん細胞を捉える技術についても実用化に向け開発を進めるべきである』などがありました。

 さらに、
④患者に優しい治療技術の開発として『従来の治療法に比べ、治療効率の向上、副作用の低減を可能とする治療法の開発は患者のQOL等から重要であるため治療効率の向上や副作用の低減を期待できるドラッグデリバリーに係る研究を推進すべきである』など、素晴らしい文言が並んでいます。

 中でも『新たな標準治療を創るための研究』と題した一説には次のようなことが記されています。
⑤『がん治療は手術療法、放射線療法、薬物療法等を適切に組み合わせた集学的治療が最大の治療効果を発揮することから個々の治療法開発のみならず、これらの最適な組み合わせによる標準治療の開発が重要である』
 さらに『治療効果の高い患者や副作用の強く出る患者等を把握し、支持療法も含め層別化した治療を一層進めることが重要である』という記述があり、こうしたことはがん撲滅サミットでも第1回大会から主張してきたことです。それが政府の文言に明文化されつつあることは大歓迎すべきことでありましょう。

 有識者会議の皆様のご活躍に心より感謝申し上げるとともに今後は、この方針が空洞化されたり、骨抜きにされぬよう会議のメンバーの皆様も患者の皆様も注視されることをお勧めいたします。

 何より政府及び国立医療機関の皆様には患者の皆様にとって10年は長いのだ、ということを認識いただき、なお一層加速化に向けて前進していただきたいと存じます。

 また国立医療機関の皆様も、この方針を自分たちの権益にするのではなく自らモデルケースを作り上げるのだという気概のもと、決して排他的にならぬようにすることが重要かと存じます。

 もし、それが困難だというのであれば、人材を含めた国立医療機関の改革案を皆様で練り上げて参りましょう。たしかに国立医療機関の皆様の才能は素晴らしい方々ばかりです。あとは患者本位の姿勢をお持ちか、どうか人間性の観点から国立医療機関のご活躍を見守って参りたいと存じます。

 何より皆様のご活動は基本的には患者、ご家族の皆様も含めた国民が納める税金から成り立っていることをご自覚いただくことが重要です。

 しかも国家医師免許とは患者の皆様を治療するために政府から与えられた免許です。

 紹介状の発行や組織提供、インチキ医療に名を借りた他の医療機関への誹謗中傷による選択肢の過剰なまでの排除など患者の権利が決して軽んじられることがないよう国立医療機関をはじめ全国の病院、医療者の皆様くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

 特にインチキ医療と称する医療機関の告発は医師がSNSで誹謗中傷的にやるのでなく当局の専権事項として力を入れていただきましょう。私も玉石混淆を区別しながら尽力させて頂きます。他の治療法の批判や過剰なまでのSNS配信に専念されるのではなく標準治療を更なるレベルに向上させる努力にこそ専念頂き、患者の皆様と向き合ってくださることを心より期待申し上げます。

 第5回がん撲滅サミットの準備を進めております。引き続きご支援のほど重ねてお願い申し上げます。
 御多忙と存じます。どうぞご自愛ください。

中見利男拝

タイトルとURLをコピーしました